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『若い藝術家の肖像』ジェイムズ・ジョイス こうして彼はいまだ知られぬ技に心を打込む

リフィー川 外国文学

若い藝術家の肖像』(A Portrait of the Artist as a Young Man)はアイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスの長編小説。1916年初版。

本記事では『若い藝術家の肖像』のあらすじ、おすすめの文庫本、アイルランド史の参考書を紹介しています。

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あらすじ

『若い藝術家の肖像』は、ギリシア神話のダイダロスとイカロスの説話を物語の枠組みに利用して、主人公スティーヴン・ディーダラスの幼年期から青年期まで、三歳から二十歳までの成長過程を描写しています。

第一章

三歳から十歳頃まで。四つの断章。

  1. 幼少時のスティーヴンの記憶。父の話に耳を傾け、母のピアノに合わせ、歌ったり、踊ったり。
  2. 六歳、全寮制のクロンゴーズ・ウッド・コレッジに入学。スティーヴンは級友のウェルズに「四角のたまり」に突き落とされ、体調を崩し、衛生室で休養する。一八九一年、アイルランド議会党の党首チャールズ・スチュアート・パーネルが亡くなる。
  3. クリスマス休暇で帰省する。ミスタ・ディーダラスとミスタ・ケイシーが家庭教師のダンテと政治的な口論をして、クリスマスのディナーを台無しにする。
  4. 生徒たちは猥褻行為をして処罰を受けた上級生たちのことを話題にしているけれども、ススティーヴンにはまだよくわからない。ラテン語の授業中、ドーラン神父に理不尽な理由から鞭打ちの罰を受けたスティーヴンは校長先生に直訴して、生徒たちから喝采を浴びる。

第二章

十歳から十四歳まで。五つの断章。

  1. 十歳頃。スティーヴンの家はブレイからブラックロックに引っ越した。スティーヴンは『モンテ・クリスト伯』に熱中する。
  2. 夏の終わり。父親の失脚。スティーヴンの家はブラックロックからダブリンの街に引っ越す。スティーヴンはエマ・クラーリーに恋心をかきたてられる。スティーヴンはベルヴェディア・コレッジに入学する。
  3. 十四歳頃。ベルヴェディア・コレッジに入学してから二年半が経過した。スティーヴンは聖霊降臨祭の芝居の主役に選ばれる。スティーヴンは、バイロンを敬愛しているためにクラスメイトから異端者としていじめられたことを回想する。終演後、エマの姿が見当たらず、スティーヴンの誇りは傷つけられる。
  4. 資産を処分するために父に同伴してコークに向かう。父親の母校クイーンズ・コレッジを案内され、青春の昔話を聞かされるがスティーヴンは父との距離を意識する。スティーヴンは教室の机に彫りつけられた《胎児フィータス》という言葉に血が騒ぎ、昔の学生たちの生活を鮮明にイメージする。
  5. スティーヴンは中間教育委員会の試験と作文科目の賞金として獲得した三十三ポンドを浪費して、自分自身の不毛な孤立、家族との距離を感じる。スティーヴンは街をさまよい、娼婦と肉体関係を持つ。

第三章

十四歳から十五歳まで。三つの断章。

  1. スティーヴンはベルヴェディア・コレッジの聖母マリア信心会の監督生を務めながら、何度も大罪を犯し、堕落した毎日を過ごした。
  2. 学校の守護聖人フランシスコ・ザビエルを記念した《静修》が始まる。クロンゴーズ校のアーノル神父の三日間にわたる説教。スティーヴンは良心の呵責に悩まされる。
  3. スティーヴンはカトリックのカプチン会の礼拝堂を訪れ、娼婦と肉体関係を持ったことを告解する。

第四章

十五歳から十六歳まで。三つの断章。

  1. スティーヴンは魂を清めるために毎日を信仰に捧げる。
  2. 校長から修道会に勧誘される。スティーヴンは「闘争的な本能」が強くなっていたために同意することができない。
  3. スティーヴンはギリシア神話の工匠ダイダロスに自分を重ねる。浜辺で青のスカートを腰までたくしあげて水浴びをしている少女を目撃する。スティーヴンは少女の姿に啓示を受け、彼の魂は再生する。

第五章

十八歳から二十歳まで。四つの断章。

  1. ユニヴァーシティ・コレッジ・ダブリンに入学。スティーヴンの同級生には社会主義者のマッキャン、民族主義者のデイヴィンがいた。スティーヴンは学監と会話をしているとき、アイルランドにとって、英語は母国語ではなく与えられた言語であることを強烈に意識する。スティーヴンは散歩をしながらリンチに美学論を披露する。
  2. スティーヴンは十年前から恋い焦がれていたエマを題材にしたヴィラネル(十九行詩)を書く。
  3. スティーヴンは図書館の石段から鳥を眺めながら、イェイツの『キャスリーン伯爵夫人』の上演を回想する。スティーヴンはクランリーに「ぼくは自分が信じてないものに仕えることをしない。家庭だろうと、祖国だろうと、教会だろうと。ぼくはできるだけ自由に、そしてできるだけ全体的に、人生のある様式で、それとも藝術のある様式で、自分を表現するつもりだ。自分を守るためのたった一つの武器として、沈黙と流寓とそれから狡智を使って」と語る。
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  • 集英社文庫ヘリテージシリーズ
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  • 岩波文庫
  • 翻訳:大澤正佳おおさわまさよし
  • 2007年

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