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『アテネのタイモン』シェイクスピア【あらすじ】【レビュー】

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シェイクスピア外国文学
『アテネのタイモン』はシェイクスピアの悲劇。アテネの貴族タイモンは大盤振る舞いで客をもてなし、贈り物を届ける。過度な浪費が繰り返され、タイモンの財産は尽き、タイモンは友人たちに借金を申し込む。しかし、薄情な友人たちはタイモンに金を貸すことを拒否する。人間に絶望したタイモンは洞窟に隠れ、世界を呪いながら、朽ち果てていく。

主な登場人物

  • タイモン
    アテネの貴族。
  • ルーシアス
    タイモンにへつらう貴族。
  • ルーカラス
    タイモンにへつらう貴族
  • センプローニアス
    タイモンにへつらう貴族。
  • ヴェンティディアス
    タイモンの不実な友の一人。
  • アルシバイアディーズ
    アテネの武将。
  • アペマンタス
    無作法な哲学者。
  • フレーヴィアス
    タイモンの執事。

あらすじ

  • 第一幕 第一場 タイモンの邸の広間
    詩人と画家、宝石商と商人が別々に登場。タイモンを賞賛する。
    ラッパの吹奏。タイモン公が訪問者の一人一人にていねいにあいさつしながら登場。ヴェンティディアスからの使者が登場して彼に口上をのべる。ルーシリアス、その他の召使いたちが続いて登場。使者は、ヴェンティディアスの投獄をタイモンに伝える。タイモンは身代金を支払う。使者退場。
    アテネの老人登場。娘とタイモンの召使いルーシリアスの結婚に反対している。タイモンはルーシリアスに財産を与えて、結婚を勧める。ルーシリアス、老人とともに退場。
    詩人、画家、宝石商は、返礼を目的にタイモンに贈り物をする。
    アペマンタス登場。
    ラッパの吹奏。使者登場。
    アルシバイアディーズとその一行登場。
    アペマンタスを残して一同退場。
    二人の貴族登場。
  • 第一幕 第二場 タイモンの邸の宴会場
    オーボエの高らかな吹奏。大宴会の用意がなされる。やがてタイモン公、アテネの貴族たち、元老院議員たち、タイモンによって牢獄から出されたヴェンティディアス、アルシバイアディーズ登場。執事フレーヴィアス、その他が登場し、控える。一同より遅れて、アペマンタスが例によって苦々しい顔つきで登場。
    召使い登場。
    キューピッド登場。キューピッド退場。
    音楽。キューピッドふたたび登場。続いて、アマゾンに扮した仮面の婦人たちが、それぞれリュートを手にし、奏し、踊りながら登場。
    貴族たちはテーブルから立ちあがり、タイモンにうやうやしく敬礼し、敬愛の念を示すためにそれぞれ一人ずつアマゾンを選び、男女が対になって一同踊る。オーボエに合わせて調子の高い音楽が一、二曲奏され、終わる。キューピッドと婦人たち退場。
    タイモンは友人たちに宝石を贈る。執事フレーヴィアスはタイモンの財産を心配している。
    召使い登場。元老院議員たちの到着を報告する。
    別の召使い登場。ルーシアス卿から銀の飾りをつけた純白の馬四頭が贈られたことを報告する。
    第三の召使い登場。ルーカラス卿から狩りの誘い、および、猟犬二番が贈られたことを報告する。
  • 第二幕 第一場 一元老院議員の邸
    元老院議員登場。タイモンの借金を計算している。
    ケーフィス登場。 元老院議員はケーフィスに、タイモンの邸に借金返済の催促に行くことを命令する。
  • 第二幕 第二場 タイモンの邸
    フレーヴィアスがたくさんの請求書を手にして登場。
    ケーフィス、イジドーの召使い、ヴァロ―の召使い登場。
    タイモンとその一行、およびアルシバイアディーズ登場。三人の召使いはタイモンに借金返済を催促する。アルシバイアディーズと貴族たち退場。
    タイモン退場。
    フレーヴィアス退場。
    アペマンタスと道化登場。
    小姓登場。小姓退場。
    タイモンとフレーヴィアスふたたび登場。
    道化、アペマンタスとともに退場。
    三人の召使い退場。フレーヴィアスはタイモンに逼迫した財政状態を伝える。タイモンは友人たちに借用を申し込むことにする。
    フラミニアス、サーヴィリアス、およびもう一人の召使い登場。サーヴィリアスはルーシアス卿、フラミニアスはルーカラス卿、第三の召使いはセンプローニアスのところに借用を申し込みに行く。
  • 第三幕 第一場 ルーカラスの邸
    主人の使いできたフラミニアスが、ルーカラスと話をするために控えているところへ、召使い登場。
    ルーカラス登場。ルーカラスはタイモンに金を貸すことを拒絶し、フラミニアスの買収を試みる。フラミニアスは激怒して、ルーカラスに金を投げつける。
  • 第三幕 第二場 街路
    ルーシアスが、ホスティリアス、および二人の外国人とともに登場。
    サーヴィリアス登場。ルーシアスはタイモンに金を貸すことを拒絶する。
  • 第三幕 第三場 センプローニアスの邸
    タイモンの第三の召使いが、タイモンの友人の一人センプローニアスとともに登場。
    センプローニアスはタイモンに金を貸すことを拒絶する。
  • 第三幕 第四場 タイモンの邸
    ヴァロ―の二人の召使い、タイモンの他の債権者たちの召使いたち、ルーシアスの召使い、タイタスとホーテンシアスが、それぞれ別々に登場。
    フィロータス登場。一同、タイモンに借金の督促にやってきている。
    フラミニアス登場。フラミニアス退場。
    フレーヴィアスがマントを着、顔を包んで登場。フレーヴィアス退場。
    サーヴィリアス登場。
    タイモンが激怒して登場。タイモン退場。一同退場。
    タイモンとフレーヴィアスがふたたび登場。タイモンはフレーヴィアスに友人たちをもう一度招待するように命令する。
  • 第三幕 第五場 元老院
    一方から三人の元老院議員、他方からアルシバイアディーズが従者たちとともに登場。
    アルシバイアディーズは死刑に処せられた「彼」を弁護して、永久追放刑を宣告される。
  • 第三幕 第六場 タイモンの邸
    タイモンの友人たち、元老院議員たちが数人ずつ、別々のドアより登場。
    タイモンと従者たち登場。宴会の料理がはこびこまれる。皿のおおいがとられると、湯と石が入っているだけである。タイモンは皿の湯を一同の顔に浴びせ、石を投げつけて一同を追い出す。
  • 第四幕 第一場 アテネ市の城壁の外
    タイモン登場。タイモンは森に向かう。
  • 第四幕 第二場 タイモンの邸
    フレーヴィアスが二、三人の召使いとともに登場。
    他の召使いたち登場。フレーヴィアスは召使いたちに金を分配する。
  • 第四幕 第三場 海に近い森のなかの洞窟
    洞窟よりタイモン登場。タイモンは土の中から金貨を発見する。
    アルシバイアディーズが、鼓笛手をともない、武装して登場、フライニアとティマンドラがあとに続く。タイモンはアルシバイアディーズを拒絶する。
    太鼓の音。タイモンを残して一同退場。
    アペマンタス登場。タイモンはアペマンタスを罵倒する。アペマンタス退場。
    三人の山賊登場。タイモンは山賊たちに悪事を奨励する。三人の山賊退場。
    フレーヴィアス登場。フレーヴィアスはタイモンに仕えることを希望するが、タイモンは拒絶する。
  • 第五幕 第一場 前場に同じ
    詩人と画家登場。詩人と画家は、下心から、打算的にタイモンに挨拶をする。タイモンは詩人と画家を追い返す。
    フレーヴィアスと二人の元老院議員登場。元老院議員はアルシバイアディーズの進軍に対抗するため、タイモンの力を必要としている。タイモンは拒否する。
  • 第五幕 第二場 アテネ市の城壁の前
    別の二人の元老院議員が使者とともに登場。
    前場の二人の元老院議員登場。
  • 第五幕 第三場 タイモンの洞窟の前
    一人の兵士がタイモンを捜しながら登場。タイモンの墓を発見する。
  • 第五幕 第四場 アテネ市の城壁の前
    ラッパの音。アルシバイアディーズが軍勢を率いて登場。
    城壁の上に元老院議員たち登場。和解を求めている。アルシバイアディーズは承諾する。
    兵士登場。タイモンの死亡を報告し、墓碑銘の写しをアルシバイアディーズに渡す。

不思議なタイモン

「お気の毒なタイモン公、その親切さが没落のもと、その善良さが身の破滅とは。不思議なおかただ、その最悪の罪は善をなしすぎることにあるのだ」

『アテネのタイモン』は、未完の作品である。例えば、第三幕第五場において、アルシバイアディーズが弁護している「彼」とは何者か。「彼」は殺人の罪を犯して、死刑宣告を受けている。アルシバイアディーズは「彼」を「温厚な美徳の持ち主」であり、殺人は「高潔な怒りと公正な勇気」の結果である、と反論する。さらに、ラシディーモン、ビザンティウムの「彼」の戦功を持ち出して、弁護する。最初、「彼」をタイモンと同一人物と考えた読者もいるのではないだろうか。

結局、「彼」とはタイモンではなく、別の人物であることがはっきりするが、以降、「彼」について、詳細な情報は与えられない。しかし、劇中において、「彼」はアルシバイアディーズ追放のきっかけとなり、重要な役割を果たしているため、「彼」について考えることは無駄なことではない。現代の演出家が翻案する場合、「彼」を主軸にすることも十分可能である。

ところで、『アテネのタイモン』の人物は、それぞれ、コリオレーナスに似ている。タイモンはアテネを呪い、アルシバイアディーズはアテネに進軍する。「彼」は高潔な性質を持っていながら、元老院から死刑宣告を言い渡される。三者は微妙にずれながら、コリオレーナスに重なっている。

いずれにせよ、重要なことは、高潔な性質を持っていながら(あるいは、あまりにも高潔であるために)、俗物たちの憎悪の対象となる、ということではないだろうか。そのため、批評家から、タイモンは悲劇の主人公として適正に欠けている、と評価され、挙句の果て、『アテネのタイモン』は風刺劇である、という主張まで登場する。でも、タイモンには『トロイラスとクレシダ』のトロイラスと同じように、悲劇の主人公として不思議なところがある。四代悲劇と比べてスケールが小さい、では片付けられない不思議な性質を持っている。多分、ホニグマンの意見が的確で、タイモン、トロイラス、(コリオレーナスも加えたい)には、別種の知的なアプローチが必要なのだろう。

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