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『城』フランツ・カフカ 時間と空間の遠近法

アイキャッチ画像 外国文学

本記事では、フランツ・カフカの未完の長編小説『』の登場人物、あらすじ、考察、映画化作品の紹介をしています。

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登場人物

  • K(1~20章)
    測量士。女房と子供がいる。過去に軍隊に所属していた。
  • アルトゥール(1~7章、10~11章、13章)
    測量士の助手。イェレミーアスとそっくりの容姿をしている。
  • イェレミーアス(1~7章、10~11章、13章、15~18章)
    測量士の助手。アルトゥールとそっくりの容姿をしている。
  • フリーダ(3~4章、7章、11~14章、18章)
    橋屋の家畜係から出世した縉紳館の酒場娘。クラムの恋人。
  • クラム(3章)
    X庁長官。
  • バルナバス(2章、10章、16章)
    使者のバルナバス。クラム長官の手紙をKに届ける。
  • オルガ(2章、14~15章)
    バルナバスの姉妹。アマーリアの姉。
  • アマーリア(2章、14~15章)
    バルナバスの姉妹。オルガの妹。
  • バルナバスの父親(2章、14~15章)
    元・消防団の第三隊長。靴屋。アマーリアが介護している。
  • バルナバスの母親(2章、14~15章)
    リューマチで腕が動かせないため、アマーリアが介護している。
  • ハンス・ブルンスウィック(1章、13章)
    靴屋のオットー・ブルンスウィックの息子。小学校の生徒。
  • フリーダ・ブルンスウィック(1章、13章)
    ハンスの妹。酒場娘のフリーダと同じ名前。
  • オットー・ブルンスウィック(5章、13章)
    靴屋。皮屋のラーゼマンの義兄弟。測量士招聘を要求した派閥のリーダー。
  • ブルンスウィック夫人(1章、13章)
    オットーの妻。城の出身。
  • ハンス(4章、6章)
    橋屋の亭主。
  • ガルデーナ(3~4章、6章、9章)
    橋屋のお内儀。
  • 縉紳館の亭主(2章、9章、19章)
    縉紳館の亭主。黒い服を着ている。
  • 縉紳館のお内儀(2章、19~20章)
    縉紳館のお内儀。衣装箪笥に大量の衣装を所持している。
  • ペーピー(8~9章、20章)
    縉紳館の女中。フリーダの代理として酒場の仕事を担当する。
  • 小学校教師(1章、7章、12~14章)
    小学校の教師。村長を尊敬していて、仕事の手伝いをしている。
  • ギーザ(12~14章)
    小学校の女教師。雌猫を飼っている。
  • シュワルツァー(1章、14章)
    城の下級執事の息子。小学校の助教員。ギーザに惚れている。
  • 村長(5章)
    村長。痛風の発作のためにベッドから起き上がることができない。
  • ミッツィ(5章)
    村長の妻。
  • ラーゼマン(1章)
    皮屋のラーゼマン。
  • ゲルステッカー(1章、17章、20章)
    馭者のゲルステッカー。
  • フリッツ(1章)
    城の下級執事。
  • ソルディーニ(5章)
    役所の連絡係。測量士の招聘問題に取り組む。
  • ソルティーニ(15章)
    城の役人。アマーリアを手紙で呼び出したが、拒否される。
  • モームス(8~9章、17章)
    クラムとヴァラベーネの在村秘書。
  • ガーラター(15~16章)
    クラムの代理。アルトゥールとイェレミーアスを派遣した。バルナバスの父親に助けられたことがある。
  • エルランガー(17~19章)
    クラムの第一秘書。
  • ビュルゲル(18章)
    フリードリヒの秘書。
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あらすじ

第一章 村への到着ーシュワルツァーー雪中の散歩ー小学校の教師ー皮屋のラーゼマンー馭者ゲルステッカー

冬の晩、測量士の「K」はウェストウェスト伯爵領に到着した。Kは宿屋の亭主の好意によって、酒場のストーブの近くで寝ることにした。ところが、城の下級執事の息子シュワルツァーに眠りを妨げられる。シュワルツァーは、Kが許可証を持っていないにもかかわらず、宿屋に泊まっているために憤慨する。Kは測量士を自称したため、シュワルツァーは真偽を確かめるために、城に電話をする。下級執事フリッツはKの身元を保証する。


翌朝、Kは城を目指した。途中、小学校教師に遭遇する。Kは当地の事情を教えてもらうために、近いうちに教師の家を訪問することにした。

Kは皮屋のラーゼマンの家で休憩をする。二人の男が盥で入浴をしていた。安楽椅子に座った女性(ブルンスウィック夫人)は赤ん坊(フリーダ・ブルンスウィック)を抱えていた。他に、二、三人の子供たち(ひとりはハンス・ブルンスウィック)が遊んでいた。

Kはアルトゥールイェレミーアスを目撃する。

Kは馭者のゲルステッカーに橇で散々振り回されながら宿屋まで連れていかれる。

第二章 ふたりの助手ー城との電話ーバルナバス、クラム長官の手紙ーバルナバスの家でー縉紳館

Kは助手のアルトゥールイェレミーアスと合流する。

Kは城に電話をかけて参上の許可を申請するが「永久にだめだ」と断られる。

使者バルナバスクラム長官からの手紙をKに届ける。手紙にはKの直接の上官は村長であることが記されていた。Kは村の労働者になりきり、活路を見出すことにして、宿屋の屋根裏部屋に住むことにした。

Kは城に連れていってもらえると誤解して、バルナバスの家に連れていかれる。バルナバスは両親と姉妹のオルガアマーリアをKに紹介する。Kはオルガに別の宿屋「縉紳館」に案内を乞う。縉紳館にはクラムが宿泊していて、亭主がはっきりとした返事をしないため、Kは縉紳館に宿泊するべきか迷う。

第三章 縉紳館の酒場でー覗き穴ーフリーダとの一夜

Kは縉紳館の酒場娘フリーダに出会う。Kは覗き穴からクラムの姿を観察する。Kは「クラムを捨てて、わたしの恋人になってください」とフリーダに愛の告白をする。フリーダは酒場にいたクラムの従者たちを追い出して、Kと寝所を共にした。


翌日、K、フリーダ、アルトゥール、イェレミーアスは「橋屋」に帰った。


第四章 橋屋のお内儀との会話

ガルデーナ(橋屋のお内儀)はフリーダを破滅させた責任をKに追及する。

第五章 村長のもとでーソルディーニのことー城の行政機構

K、アルトゥール、イェレミーアスは村長の家を訪問する。村長は、測量士の招聘問題は役所の連絡係ソルディーニが担当していたこと、さらに、城の行政機構の特性について説明する。

第六章 橋屋のお内儀の身の上話

ガルデーナ(橋屋のお内儀)は自分の過去を語る。

第七章 小学校教師の来訪

二階の部屋では小学校教師が待っていた。小学校教師は村長からの伝言を預かっていた。村長は「小学校の小使」の地位をKに提供することにした。Kは拒絶したが、フリーダに説得されて、結局引き受けることにした。

第八章 ペーピーー中庭での待ち伏せ

Kは縉紳館に出かけた。フリーダの代理で酒場の仕事をしていたペーピーから、クラムの橇が中庭で待っていることを聞いて、待ち伏せをすることにした。しかし、クラムではなく、別の紳士(モームス)がやってきた。

第九章 在村秘書モームスー尋問を断る

縉紳館の酒場には、クラムの在村秘書モームスとガルデーナ(橋屋のお内儀)が待っていた。モームスはKに尋問を要求する。Kは拒絶する。

第十章 帰り道でークラムの第二の手紙ーバルナバスに伝言

アルトゥールとイェレミーアスが迎えにきていた。帰り道、バルナバスに遭遇する。バルナバスはクラムの第二の手紙を持ってきていた。手紙はKの測量の仕事を評価していることを伝えていた。Kはバルナバスに伝言を依頼する。

第十一章 学校での第一夜

夜、Kは学校に帰ってきた。Kたちは物置を斧で打ちこわし、薪を取り出し、ストーヴに火を焚きだしてから眠ることにした。深夜、フリーダは猫に驚き、飛び起きる。

第十二章 女教師ギーザー朝のいさかい


翌朝、女教師ギーザに授業の準備をしていないこと、猫に怪我をさせたことを叱られる。さらに、男教師から物置の扉を壊したことを責められる。

第十三章 助手たちを追いだすーフリーダとの語らいー助手たちのことーハンス・ブルンスウィック少年ーハンスの母親ーフリーダの意見

Kはアルトゥールとイェレミーアスを解雇することにした。アルトゥールとイェレミーアスは教室から追い出され、窓の外から復職の懇願をする。

ハンス・ブルンスウィック少年は授業を抜け出してKの部屋を訪れた。ハンスはKの味方になることにした。ハンスの母親は城の出身であるため、Kは面会を希望する。ハンスは父親が縉紳館に出かけている間に、Kを母親に会わせることを承諾する。

フリーダはKを非難する。男教師が昼食の配達を命令したため、Kは仕事に出かける。

第十四章 シュワルツァーの恋ーバルナバスを訪ねるーアマーリアとの会話

シュワルツァーはギーザに惚れていて、小学校の助教員として働いていた。

Kはバルナバスの家を訪問する。バルナバスは不在だったため帰ろうとしたところ、アマーリアに引き止められる。

第十五章 オルガとの会話ー使者の仕事ー城の官房ークラムについての疑惑ーアマーリアの秘密ーアマーリアの罰ー請願ーオルガの計画ー深夜の訪問者

オルガはバルナバスの使者の仕事、城の官房、クラムの容姿、アマーリアの秘密と罰について語る。

三年前に消防団の祭典が催されたとき、アマーリアは役人のソルティーニに手紙で縉紳館に呼び出された。アマーリアは使者を侮辱して、ソルティーニを拒絶したため、家族は村のひとたちから軽蔑されるようになった。オルガとバルナバス、父親は城に請願を試みたが徒労に終わった。そして、今、家族の運命はKの存在にかかっていた。

イェレミーアスがKを迎えにきた。Kは隣家の庭の垣根を越えて、中庭を通り抜けて道路に出ることにした。

第十六章 イェレミーアスとの会話ーガーラターのことーその後のフリーダーバルナバスーエルランガーからの伝言

イェレミーアスの容姿は変貌していた。イェレミーアスの話では、アルトゥールは城に帰り、Kの苦情を訴えているところだ。助手たちはクラムの代理ガーラターから派遣されていた。フリーダは酒場にもどり、イェレミーアスは縉紳館のボーイになっていた。

バルナバスはKの請願をクラムに伝えることはできなかったが、クラムの第一秘書エルランガーから伝言を受け取ることに成功した。エルランガーは縉紳館の十五号室でKを待っていた。

第十七章 夜の尋問ー縉紳館の客室

縉紳館の前には陳情者たちの行列ができていた。最初に、Kと馭者のゲルステッカーが呼び出された。ところが、エルランガーは眠っていたため、エルランガーが起きるまで待たなければいけなかった。

第十八章 縉紳館に戻ったフリーダー病気のイェレミーアスービュルゲルの部屋で

Kはフリーダと再会する。フリーダの部屋には病気のイェレミーアスが寝ていて、フリーダが看病をしていた。

エルランガーの部屋がわからなくなり、適当にドアを開けてみたところ、フリードリヒの秘書ビュルゲルの部屋である。ビュルゲルはKの問題を解決するための千載一遇の好機を提示する。しかし、Kは疲れて、眠ってしまっていたため、ビュルゲルの話を聞いていなかった。

隣の部屋からエルランガーの声がした。ビュルゲルに起こされて、Kは部屋を出た。

第十九章 エルランガーー縉紳館の朝ー書類分配ーKのスキャンダル


エルランガーは、クラムが仕事に専念できるようにフリーダが酒場に戻ることを命令して、帰っていった。

廊下では従僕たちが書類分配の仕事をしていた。Kが書類分配の様子を観察していたところ、縉紳館の亭主夫婦に責められ、酒場に連れていかれる。

第二十章 ペーピーの告白ー縉紳館のお内儀

ペーピーは自分の不幸について語る。

縉紳館のお内儀はKを帳場に連れていって衣装箪笥の中身を披露する。

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カフカ文学の時間と空間の遠近法

フランツ・カフカの長編小説『』では、測量士のKは永久に城にたどりつけない。さまざまな登場人物たちに振り回されたり、だまされたり、非難されながら、Kは悪夢的な世界をさまよう。

カフカの文学は時間と空間の遠近法が歪んでいる。便宜的に作品の記述を信じるなら、測量士がウェストウェスト伯爵領に到着してから六日間が経過しているけれども、時間の経過および場所の移動の描写はあいまいである。

一旦、Kの行動を整理しておきたい。

  • 一日目「ウェストウェスト伯爵領の宿屋に到着」
  • 二日目「宿屋」→「皮屋のラーゼマンの家」→「橋屋」→「バルナバスの家」→「縉紳館」
  • 三日目「縉紳館」→「橋屋」
  • 四日目「橋屋」→「村長の家」→「橋屋」→「縉紳館」→「小学校」
  • 五日目「小学校」→「バルナバスの家」→「縉紳館」
  • 六日目「縉紳館」

Kは頻繁に移動を繰り返しているけれども、具体的な描写は少ないために作品の記述から地図を描くことは不可能であり、しかも、当地では時間は伸縮自在であり、時間経過の記述は非常に怪しいものになっている。

そして、時間と空間の歪みは登場人物の分裂を引き起こした。例えば、測量士の助手、アルトゥールイェレミーアス

「きみらは、だれだ」と、Kは言って、ひとりずつ順にながめてみた。
「あなたの助手です」ふたりは、答えた。
「これは、助手でございますよ」と、亭主も、小声で口添えをした。
「なんだと」と、Kは、問いかえした。「おまえたちは、あとから来るようにと言いつけておいて、おれが待っていた昔からの助手だというのか」(p.40)

読者は「おや?」と違和感を感じる。「昔からの助手」であるにもかかわらず、Kはアルトゥールとイェレミーアスを認識できていない。しかも、「これは、助手でございますよ」と亭主が口添えする。Kのいないところで勝手に話は進められているのだ。

アルトゥールとイェレミーアスはガーラターから派遣されている人間であり、イェレミーアスはフリーダの幼馴染である。これじゃあまるでアルトゥールとイェレミーアスは自分たちの役割を滑稽に演じているだけみたいだ。さらに、アルトゥールとイェレミーアスはおたがいにそっくりの容姿をしているから、分裂は重層的な構造をしている。

それから、「橋屋」と「縉紳館」の相似形。

宿屋は、Kが部屋をとっている宿屋と外面はよく似ていた。一般に、この村ではどの家も、外面的にはたいした相違がないようであった。しかし、小さな相違は、すぐに気がついた。たとえば、入口の階段は、手すりがついていたし、美しい角燈が戸口の上にとりつけてあった(p.71)。

「橋屋」と「縉紳館」は相似形でありながら、微妙にずれている。ややこしいところが「おかみさん」の存在だ。Kは「橋屋」と「縉紳館」を往復しているから「橋屋」のおかみさん(ガルデーナ)と「縉紳館」のおかみさんが交代に登場する。多分、普通に読んでいたら「橋屋」と「縉紳館」を混同するかもしれない。

もしかしたら「橋屋」と「縉紳館」の間には時間・空間的なズレが発生しているのかもしれない……とTHE・文学評論的なことをいいたくなるけれども、多分、カフカの文学では、不条理をありのままに受容しなければならないのだろう。『変身』のグレゴール・ザムザと同じように。

個人的には、混乱しながら、混同しながら、悪夢の中を彷徨する感覚で『城』を読んでいただきたい。

映画化作品

オーストリアの映画監督ミヒャエル・ハネケが1997年にテレビ映画『カフカの「城」』を製作している。『ミヒャエル・ハネケ DVD-BOX2』は他に『コード・アンノウン』『タイム・オブ・ザ・ウルフ』を収録。

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