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『終わりよければすべてよし』シェイクスピア【あらすじ】【レビュー】

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シェイクスピア外国文学
『終わりよければすべてよし』はシェイクスピアの戯曲。舞台はフランス。医者の娘ヘレナは、ロシリオン伯爵バートラムに身分違いの恋をする。シェイクスピアの「問題劇」のひとつに数えられている。

主な登場人物

  • フランス王
    ヘレナに病気を治してもらい、バートラムとヘレナの結婚を命令する。
  • バートラム
    ロシリオン伯爵。ヘレナと結婚することを嫌がっている。
  • ペーローレス
    バートラムの家臣。
  • ロシリオン伯爵夫人
    バートラムの母。ヘレナの恋を応援する。
  • ヘレナ
    伯爵夫人に保護されている孤児。バートラムに恋をしている。
  • ダイアナ
    未亡人の娘。バートラムに口説かれている。

あらすじ

  • 第一幕 第一場 ロシリオン、伯爵の邸
    ロシリオンの若き伯爵バートラム、その母である伯爵夫人、ヘレナ、ラフュー卿が、いずれも喪服を着けて、登場。バートラム、フランス国王に仕えるため、パリに旅立つ。
    伯爵夫人、退場。バートラム、ラフュー、退場
    ヘレナ、傍白。バートラムに恋をしている。
  • 第一幕 第二場 パリ、王宮
    手紙を手にしたフランス王、貴族たち、従者たち、登場。フローレンスとシエナの戦争について話している。
    バートラム、ラフュー、ペーローレス、登場。
  • 第一幕 第三場 ロシリオン、伯爵夫人の邸
    伯爵夫人、執事、道化、登場。
    道化、ヘレナを呼びに行く。道化、退場。
    執事、ヘレナがバートラムを愛していることを伯爵夫人に報告する。執事、退場。
    ヘレナ、登場。伯爵夫人、ヘレナの恋を応援する。ヘレナ、王の治療のために、宮廷に行く。
  • 第二幕 第一場 パリ、王宮
    フランス王が、フローレンスの戦いにおもむく二組の青年貴族たちを従えて登場、バートラム、ペーローレス、従者たちがあとに続く。
    貴族たち、出陣する。バートラムは、出陣を許されず、宮廷に残る。貴族たち、退場。
    パートラム、ペーローレス、退場。
    ラフュー、登場。ヘレナが謁見を希望していることを王に伝える。
    ヘレナ、登場。王の治療に成功したら、希望する男性と結婚する権利が与えられるという約束をして、王の治療に取り組む。
  • 第二幕 第二場 ロシリオン、伯爵夫人の邸
    伯爵夫人、道化、登場。伯爵夫人、ヘレナ宛の手紙を道化に渡す。
  • 第二幕 第三場 パリ、王宮
    バートラム、ラフュー、ペーローレス、登場。王の回復を喜んでいる。
    王、ヘレナ、従者たち、登場。従者、宮廷の貴族たちを呼びに行く。従者、退場。
    三、四人の貴族、登場。ヘレナ、バートラムを指名して、結婚を希望する。バートラム、拒否する。ペーローレスとラフューを残して一同、退場。
    ラフュー、ペーローレスを侮辱する。ラフュー、退場。
    バートラム、登場。ヘレナを家に帰して、戦場に行くことを決意する。
  • 第二幕 第四場 パリ、王宮
    ヘレナ、道化、登場。
    ペーローレス、登場。バートラムが戦場に行くことをヘレナに伝える。
  • 第二幕 第五場 パリ、王宮
    ラフュー、バートラム、登場。
    ペーローレス、登場。ラフュー、ペーローレスを信用するべきではない、とバートラムに忠告する。ラフュー、退場。
    ヘレナ、登場。バートラム、伯爵夫人宛の手紙をヘレナに渡して、戦場に行く。
  • 第三幕 第一場 フローレンス、公爵の邸
    フローレンス公爵、二人のフランス貴族、一隊の兵たち、登場。
  • 第三幕 第二場 ロシリオン伯爵夫人の邸
    伯爵夫人、道化、登場。伯爵夫人、バートラムからの手紙を読み、バートラムを非難する。
    ヘレナ、二人のフランス貴族、登場。ヘレナ、巡礼の旅に出る。
  • 第三幕 第三場 フローレンス
    フローレンス公爵、バートラム、太鼓手とラッパ手たち、兵士たち、ペーローレス、登場。パートラム、フローレンス公爵に仕える。
  • 第三幕 第四場 ロシリオン、伯爵夫人の邸
    伯爵夫人、執事、登場。伯爵夫人、執事から手紙を受け取って、ヘレナが巡礼の旅に出たことを知って、嘆く。
  • 第三幕 第五場 フローレンスの市外
    フローレンスの老未亡人、その娘ダイアナ、その隣人ヴァイオレンタとマリアナ、その他の市民たち登場。バートラムからヘレナが言い寄られていることを心配している。
    ヘレナ、登場。ヘレナ、未亡人の宿に宿泊する。
  • 第三幕 第六場 フローレンス軍の陣営
    バートラムと二人のフランス貴族、登場。貴族たち、ペーローレスは信頼できない男だとバートラムに忠告する。
    ペーローレス、登場。バートラム、ペーローレスの正体を確かめるために、敵に奪われた太鼓を取り戻すように命令する。
  • 第三幕 第七場 フローレンス、未亡人の家
    ヘレナ、未亡人、登場。ヘレナたち、「ベッド・トリック」作戦を企てる。
  • 第四幕 第一場 フローレンス軍の陣営近く
    貴族1が五、六人の兵士とともに、待ち伏せるために登場。
    ペーローレス、登場。兵士一同、ペーローレスを捕らえ、目隠しをする。兵士たちはでたらめな外国語を話して、敵に捕まったとペーローレスに思い込ませる。ペーローレスは、バートラムのところに連れて行かれる。
  • 第四幕 第二場 フローレンス、未亡人の家
    バートラム、ダイアナ、登場。バートラムはダイアナを口説いている。バートラムは、愛の証拠として、家宝の指輪をダイアナに渡す。
  • 第四幕 第三場 フローレンス軍の陣営
    二人のフランス貴族と、二、三の兵士、登場。ヘレナが旅先で亡くなったという噂話をしている。
    使者、登場。バートラムが公爵に暇乞いをして、フランスに帰国する旨を伝える。
    バートラム、登場。兵士たち、退場。
    兵士たちがペーローレスを引っ立ててふたたび登場。ペーローレス、軍事機密を漏らし、貴族たちを罵る。貴族たちはペーローレスを追放する。
  • 第四幕 第四場 フローレンス、未亡人の家
    ヘレナ、未亡人、ダイアナ、登場。ヘレナ、マルセーユに滞在している王を追いかける。
  • 第四幕 第五場 ロシリオン、伯爵夫人の邸
    道化、伯爵夫人、ラフュー、登場。ヘレナは旅先で亡くなった、と思っている。ラフュー、バートラムと自分の娘の結婚を提案する。
  • 第五幕 第一場 マルセーユ
    ヘレナ、未亡人、ダイアナ、二人の従者、登場。
    見知らぬ紳士、登場。ヘレナ、王宛の請願書を紳士に渡す。王はロシリオンに出発したため、ヘレナたちも後を追いかける。
  • 第五幕 第二場 ロシリオン、伯爵夫人の邸
    道化、ペーローレス、登場。
    ラフュー、登場。道化、退場。
    ラフュー、ペーローレスに情けをかける。
  • 第五幕 第三場 前場に同じ
    王、伯爵夫人、ラフュー、二人のフランス貴族、従者たち、登場。
    バートラム、登場。ヘレナが亡くなった、と信じているため、バートラムとラフューの娘の結婚の準備を進めている。バートラムの指輪が、王がヘレナに渡した指輪であることに、皆が気づく。バートラムがヘレナから指輪を強奪したのではないかと疑い、王はバートラムを連行させる。バートラム、退場。
    紳士、登場。ヘレナの請願書を王に届ける。差出人はダイアナ、バートラムがダイアナの操を奪って、フローレンスから逃げ出した、という内容である。
    バートラムが警護されてふたたび登場。
    未亡人、ダイアナ、登場。ダイアナ、バートラムを非難する。証拠として、バートラムが(ダイアナと勘違いして)ヘレナに渡した指輪を出す。
    ペーローレス、登場。証言をする。
    ヘレナ、登場。誤解が解けて、バートラムはヘレナを妻として愛することを約束する。
  • エピローグ
    口上。

もやもやとした感覚

「終わりよければすべてよし、終わりこそつねに王冠です、途中はいかに波風立とうとも、最後がすなわち名誉です」

『終わりよければすべてよし』は、シェイクスピアの「問題劇」のひとつに数えられている。純粋な喜劇と呼ぶことができない。ヘレナは「終わりよければすべてよし」というけれども、観客の我々には、もやもやとした感覚が残っている。バートラムと結婚することは、ヘレナにとって、本当に幸せなことだろうか、という疑問が沸き起こる。

一方で、もやもやとした感触の理由は、劇中の人物たちが張り巡らす策略である。ヘレナの偽造死、「ベッド・トリック」、それから、第四幕では、ペーローレスの正体を明らかにするために、兵士たちがでたらめな外国語を話して、ペーローレスは敵に捕まったと錯覚する。『冬物語』ではないけれども、いささか、荒唐無稽という気がする。

ただし、400年前の戯曲だから、当時の観客は、登場人物たちの行動に疑問を全然持たなかったかもしれない。結末も「よかったね」で終わるかもしれない。シェイクスピアの戯曲の魅力は、時代の変化に応じて、観客の反応、批評家の反応が異なって、様々な部分にスポットライトが当てられていく、ということなのだろう。

脇筋のペーローレスの役割も不思議だ。当時、コメディの要請があったから、ペーローレスが存在しているだけかもしれないが、うすっぺらな本性を見破られた姑息な男で片付けることができない存在感がある。策略に陥って、貴族たちに見放された直後も、ペーローレスの態度はあっけらかんとしている。最終的には、ラフューに温情をかけられていて、「終わりよければすべてよし」という台詞はペーローレスに与えられている、と受け取ることもできる。一見、主筋とは関係ないペーローレスの没落だが、劇全体に奇妙な光を投げかけている。

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