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【連載第8回】今日の広辞苑「かんよう【寒羊】」

今日の広辞苑8 ニュース
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かんよう【寒羊】
黄河中流域並びにその隣接地域に分布するヒツジの一品種。尾に脂肪を貯えるのが特徴。

第8回の語は「かんよう【寒羊】」

ランダムに指定した679ページ4段には、「カンヨウ」の音の語がずらりとならんでいた。たいていは聞いたことのある「カンヨウ」である。肝要、官用、官窯、咸陽、寛容、慣用、涵養など。しかし「寒羊」というものは聞いたことがない。

中国の黄河流域で飼育されている羊の品種。「尾に脂肪を貯えるのが特徴」というわけでインターネットで画像検索をしてみて、驚いた。私のイメージよりはるかに尾に脂肪を貯えているのである。

「寒羊」は厳寒の地に適応するため……というわけではなく、どうやら人為的に品種改良されたものだという。遊牧民は脂肪をたくさんとりたいわけだが、あんまりでっぷりとしたヒツジさんでは、移動の際に不便になる。そういうわけで、尾に脂肪がたまるように品種改良した「寒羊」が誕生したらしい。

まあ、ヒトはとんでもないことをやるものである。

動物にせよ、植物にせよ、品種改良の背後には、さまざまなヒトの欲望がひそんでいる。もっとおおきく、もっとあまく、もっとやわらかく。欲望に応えるように、形や性質を変えていく従順な命のカタチ。つまるところ、品種改良とは「人間の都合に合わせた進化」である。

もちろん、品種改良のおかげで人類の生活は豊かになった。スーパーマーケットにならんでいるものは品種改良の成果である。逆に品種改良されていない原種のものを探すことの方が難しいだろう。

だが、ふと、不安になることもある。あらゆるものがヒトの合理性に従って選別され、調整され、最適化されている社会。いつか、わたしたちは苛烈な報復を受けることになるのではないかと。

……いつかヒトも品種改良されて、お腹の脂肪がしっぽになったりするのだろうか?

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