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【連載第4回】今日の広辞苑「とうこうち【陶行知】」

今日の広辞苑4 ニュース
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とうこうち【陶行知】
(Tao Xingzhi)中国の教育家。安徽歙(きゅう)県の人。米国でデューイの教育思想を学び、帰国後平民教育、生活教育運動を推進。また民権擁護・抗日民族統一戦線運動に参加。(一八九一 一九四六)

広辞苑第七版「とうこうち【陶行知】」p.2052

2052ページの4段目から「陶行知」を選んだのは、そこにジョン・デューイの名前を見つけたからだ。学生時代、デューイの教育思想に興味を持ち、少しばかり読んだことがある。その影響を受けた中国の教育家がいたという。それだけで、視線が止まった。

陶行知は、アメリカでデューイのプラグマティズムを学び、それを中国に持ち帰った。「学びは経験から始まる」――彼はその理念を、教育現場で実践した。机上の知識ではなく、暮らしの中にこそ学びがあるという思想だ。

名前にも、その思想が表れている。本名は陶文濬(とうぶんしゅん)。もともとは王陽明の知行合一思想に影響を受け、「知行」と号していたが、やがて「行」は「知」の始まりであると考えるようになり、「行知」に名前を改めた。

私は学校が苦手だった。教師の言葉には常に何か違和感があり、他の生徒たちともうまくやっていくことができなかった。まるでひとりでカルト宗教の組織に潜入しているような、そんな孤独な感覚を抱えたまま通っていた。

だからこそ、リベラルな教育思想に引きつけられるのかもしれない。リベラルの教育家たちが目指した理想の教育。現代日本の教室に、その面影はあるだろうか。プラグマティズム=実用主義の意味が歪められ、国益のために子供たちに「実用的な」スキルを与えることだけが考えられているのではないだろうか。

陶行知のまなざしが、いまも静かにこちらを見つめている。
教えるとは? 学ぶとは?
そして――教育とは、何か?

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