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【連載第3回】今日の広辞苑「まけぶり【馬煙】」

今日の広辞苑3 ニュース
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まけぶり【馬煙】
馬の駆け走った時にたつ土ぼこり。うまけむり。

「まけぶり」。初耳の単語である。「馬の煙」と書いて「まけぶり」。馬が走るとき、土を蹴り、風を裂き、煙が舞いあがる。ただそれだけの現象に、名前が与えられている。

疾走感があり、風情のある響きをしている。歴史小説や講談などにも使われているかもしれない。馬煙をあげながら、真田左衛門佐が戦場を駆ける……というように。

それはさておき、人類は馬と共に歴史を歩んできた。馬にまたがり、旅をして、戦をして、田畑をたがやす。馬を用いた表現は多い。「馬脚をあらわす」「馬の骨」「馬が合う」。言葉の背後に蹄の音が響いている。いずれも、かつての生活に馬が密接に関わっていた証拠だ。

現代社会では日常的に馬を見かけることはない。現代の道路はアスファルトで、もう煙は立たない。だから、「まけぶり」という語も使われなくなっている。

まけぶり。疾走。その余韻だけが残されている。しかし、馬が身近にいなくとも、疾走する何かの背後には、うっすらとした煙の気配が立っている。

全力で走り抜けたとき、何かを駆け抜けたあと、ふと振り返ったとき、目には見えなくとも、そこにうっすらと立っている。そんな気がするのだ。名のない煙のようなものが。

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