ワンデルング【Wanderung ドイツ】
広辞苑第七版「ワンデルング」p.3180
自由に山野を歩きまわること。
第11回の語は「ワンデルング(Wanderung)」。
ドイツ語で、「彷徨」や「遍歴」を意味する。英語の 「wander」 にも近い。日本語では「ワンダーフォーゲル運動」などの政治的コンテクストで、あるいは登山が趣味の方は「リングワンデルング」という専門用語で聞いたことがあるかもしれない。
広辞苑の説明は「自由に山野を歩きまわること」のみ。非常にシンプルだ。あなたは「ワンデルング」という単語からどういうイメージを持たれるだろうか?
アウトドア、ナチュラリスト、バックパッカー、ノマド、ヴァガボンド?
意外なところでは、特に19世紀ドイツでは、職人見習いが経験を積むために放浪する制度「徒弟放浪」があり、それもまた「ワンデルング」のイメージである。というより、もしかしたらこれが「ワンデルング」のオリジナルイメージかもしれない。さまよいながら、学ぶ。移動しながら、成長する。厳格に定められた規則がある非常に過酷な遍歴修行であり、社会に縛られない自由奔放なイメージは感じられない。
あるいは、「定職につかずふらふらしている」というような否定的なニュアンスも含まれているらしい。19世紀末から20世紀初頭のドイツでは、定住しない人々=放浪者を「Wanderer」や「Landstreicher」と呼び、不安定な社会階層や失業者と結びつけてネガティブに見なす風潮もあったようだ。
ちなみに、なぜ、わざわざドイツ語の「ワンデルング」が特に日本に輸入されているかというと、やはり日本とドイツは、社会の息苦しさという点で似通ったところがあるからだろう。「さまよう」ことの価値。それを忘れた社会は、どこか貧しい。