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『決定版 短歌入門』角川短歌ライブラリー【概要】

短歌

決定版 短歌入門』秋葉四郎、岡井隆、佐佐木幸綱、馬場あき子監修、『短歌』編集部編(角川学芸出版、2012年)の要点を整理しました。

短歌の基本

短歌とは「五七五七七」の五句、「三十一文字みそひともじ」を基準とした和歌。
やまと歌」の本質は「心に思ふことを、見るもの聞くものにつけて、言ひ出せる」ことである(『古今和歌集』仮名序、紀貫之)。短歌は「抒情詩」であり、歌の発生源は「心の働き」「気分」である。
短歌の起源として、長歌(五音七音をくりかえし最後を五七七で結ぶ)の末尾が独立した説、旋頭歌(五七七五七七)の第三句の七音が省略された説が挙げられる。
長歌・旋頭歌・短歌に共通することは五音七音の組み合わせ。日本語の表現は五音・七音にまとまりやすい。五音・七音が奇数であるため、一句のなかの音数が半々にならないことがリズムを生んでいる。例えば、五音は「三・二」「四・一」、七音は「四・三」「五・二」に切ることができる。

「五七調」と「七五調」

  • 五七調」…「五七/五七/七」。「二句切れ」四区切れ」がポイントになる。『万葉集』に主流で、一般に「荘重・重厚・典雅といわれる。
    例:「熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな」額田王
  • 七五調」…「五七五/七七」。「三句切れ」がポイントになる。『新古今和歌集』で確立され、一般に「流麗・優美といわれる。
    例:「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮」藤原定家

「句切れ」

  • 「句切れ」…「場面や心情の転換のある場所に置かれ、感動の焦点となる作用」「短歌をいくつかの部分に分ける場所を設け、それぞれの部分でいろいろなことを述べながら、全体で別次元のことを詠いあげる」

自分の作品の「句切れの位置」をチェックする。句切れが内容に合致しているか、また、連作を発表する場合は、例えば、五七調の歌ばかり続いていないかチェックする。

「文語」と「口語」

  • 「文語」…平安時代中期ごろの日本語の体系。厳密には、平安時代の京と、その周辺のことばの体系を基にして、その前後の時代や、京以外の地方のことばも考慮したもの。
  • 「口語」…話しことばも書きことばも含めた現代語の体系と捉えた上で、現代語の文法の意味。

「現代仮名遣い」と「歴史的仮名遣い」

  • 現代仮名遣い」…昭和二十一年十一月の内閣告示によって示され、同六十一年七月の内閣告示で改正された仮名遣いで、現在、広く行われている。
  • 歴史的仮名遣い」…平安時代前期の音韻を基礎としたもの(イとヰ、エとヱ、オとヲ、ジとヂ、ズとヅの区別)。

短歌の分類

  • 生活詠
  • 人生詠
  • 自然詠
  • 社会文化詠

角川現代短歌集成』(角川学芸出版 、2009年)の分類を参照。

作歌の基本

とりあえず「五七五七七」の型を楽しみながら短歌を作る。
身近なものを観察して短歌を作る。短歌は作者の生活を伝えている。窓からの景色でも、ゴミ出しに行ったときに近所の人と交わした話題でもOK。
対象を徹底的に観察することが重要である。斎藤茂吉は作者が主体的に対象の本質を探求する方法を「実相観入」と呼んだ。
最初は有名な歌をモデルにして、表現の展開を学ぶ。

定型表現の基本

  • 清水へ祇園をよぎる桜月夜 こよひ逢ふ人みなうつくしき 与謝野晶子
  • あかあかと一本の道とほりたりたまきはる我が命なりけり 斉藤茂吉
  • 友がみなわれよりえらく見ゆる日よ/花を買ひ来て/妻としたしむ 石川啄木

上の句」は「場面」、「下の句」は「心情」の型。「原因」と「結果」に単純化して考えてもいい。

「字余り」と「字足らず」

  • 字余り」…定型の音数を超過している。
  • 字足らず」…定型の音数に不足している。
型にはめすぎると作品がおとなしくなって、作者の感動が伝わりにくくなる。
字余り」の際には「三・三」「四・四」の半数に割れる表現はそれで本当にいいか考えてみる。
入門者は、最初は定型の音数に従うべきである。どうしても自分の言いたいことが言えない、自分らしさが出ないという場合に「字余り」をいれる。「字足らず」は初心者は避けたほうがいい。型に慣れてきてから、効果を確認する。

「直喩」と「隠喩」

  • 直喩」…「ごとく」「ように」「みたいに」などを使った比喩。
  • 隠喩」…直喩に対して「ように」を使わない比喩。
比喩は直感が命。考えて作った比喩はわざとらしくなりつまらない。

「オノマトペ」

  • オノマトペ」…擬声語擬音語擬態語の総称。
短歌では作者が工夫して考え出した新鮮なオノマトペが必要になる。「平凡でないこと、使い古されていないこと」また「奇抜過ぎないこと」が大切な要素になる。優れたオノマトペは対象の特徴を説明でなくストレートに感覚的にずばりと捉えている。

「固有名詞」

  • 固有名詞」…言葉の内容が濃密になり、読者の想像力を刺激する。人物・地名は知名度を考慮する必要がある。
地名はほどほどの地名度を選ぶのがコツ。

「説明」「描写」「詠嘆」

  • 説明」…内容を伝えるためには必要不可欠だが、「説明だけで終わっている歌」「必要以上に説明している歌」にならないようにする。
  • 描写」…内容に具体性を持たせるために対象の様子を描くこと。
  • 詠嘆」…大きく感動した時その感動を制御せず、もろに(あるいは誇張して)表現することで、短歌ではあまり手放しでこれをしてはいけない。
「不要な説明の部分を削り落とし、できるだけ詠嘆を抑え、最低限の描写を入れること」が重要。

「てにをは」

  • てにをは」…狭義では「助詞」のみ、広義では「助動詞」を含む。
江戸後期の国学者の鈴木あきらは「てにをは」を「心の声」と呼ぶ。言語学者の時枝誠記もときは「主体的なものの直接的表現」、つまり「判断や情緒、欲求など表現主体の心のありようを直接伝えている」と解釈する。
周到に選択・配置された「てにをは」は、作品の散文的意味に陰翳や奥行きを添えることができる。変哲のない助詞でも、配列次第で特別な存在感を帯びる。

「動詞」

  • 動詞」…事物の動作や状態を表現する。
動詞の多用は厳禁。多くても、一首に三つまで。
動詞は描写に便利な言葉だが、歌が説明的にならないために多用は厳禁。短歌の本質は感動の焦点を絞り込んで提示し、その限定によって全体を暗示することであり、動詞の便利さと表裏一体の陥穽には注意しなければならない。適切な単純化と省略に心を配ることが動詞を効果的に用いるための前提である。

素材の選択

近代歌人たちの素材の選択方法。

  • 自分の主題を決めて、一生をかけてその主題を詠う方法(「農業を詠う」「電車を詠う」「銀座を詠う」「海を詠う」)。
  • とくに主題は決めず、日記をつけるように、日々に体験するあれこれや、日々の思いを詠う方法(日々の生活、ニュース、読書等々)。

一般的には、得意分野を1~2個持ちながら、同時に、日常的な事物に取材するというスタイル。

短歌は抒情詩=「情」を「抒」べる詩であり、事柄を報告したり、理論を説得したりするものではない。「心の波立ち」を表現しているなら、「素材」に優劣はない。
短歌は詩であり、詩は芸術である。噂話、愚痴ではなく、また自分の意見を述べるものでもない。当たり前のことを当たり前の言葉で言うものではない。花の美しさをどのように表すか、孫への愛情をどう表すか、そこが考えどころである。常識、類型にとらわれない「発見」が必要である。
素材の吟味が必要である。これと思ったものは何が何でも歌にしようというのは無理である。ボール球に手を出す必要はない。ファウルにしかならない素材はどんなに技巧をこらしてもヒットにはならない。素材の選択は思想の問題になる。また同じ素材でも、どのような角度から形にしていくか、どういう言葉を使って形にしていくか、が問題になる。短歌には「何をどのように」の苦闘の歴史がある。

上達の秘訣

  • 名歌集を熟読すること。同性で、同世代ないしは年齢の近い歌集を選ぶこと。
  • 参考になる表現を意識的に真似をする。自分で工夫して、異なる表現にする。季節や場面を変える、語彙を変える。
  • 語彙を増やすためには「類語辞典」を活用する。
  • 初心者の課題は「初句」。詠みたい素材を第一句に据えるひとが多い。唐突で頭でっかちになる。

推敲のポイント

指導者として尊敬できる歌人の結社に入り、歌稿を毎月見てもらうことによって次第に作歌のコツを覚え、やがて師の添削を離れて自覚的に推敲を行うという流れが自然である。

  • 森の上の朱塗の塔の片へのみ真白になりて雪晴れにけり 作者未詳・原作
  • 森の上に見ゆる幾重の朱の塔の片へ真白に雪つもりけり 正岡子規・改作

正岡子規の「頭重脚軽の病」の例。原作の上二句に重たい「有形物」を入れ、第三、四句に「のみ」「なりて」といった「虚字」があるのは「頭重脚軽の病」であり、バランスが悪いと指摘する。「軽く歌い起こし、どっしりと歌い収める」は作歌の基本中の基本。

「嘱目発想法」折口信夫

  • 飛鳥川みなぎらひつつ行く水のあひだもなくも思ほゆるかも
    日本書紀歌謡一一八
  • 高浜に来寄する浪の沖つ浪 寄すとも寄らじ 子らにし寄らば
    風土記歌謡四

嘱目発想法」…折口信夫が命名した「とりあえず目に映った情景や物象からランダムに歌い起こし、重要な主題的心情につなげていく古代特有の表現方法」。古代歌謡、万葉集に見受けられる。

現代社会では、素材が複雑化しているため、初句から重い叙述や描写から歌い起こさなければならないことがある。外来語、特殊な述語を避けられない。

短歌を楽しむために

  • 総合誌を読む。
  • 通信講座・カルチャーセンターに通う。
  • 結社・同人誌に参加する。
  • 新聞・雑誌に投稿する
  • 歌会に参加する。
  • 吟行に出かける。
  • 題詠で学習する。
  • 自分の歌集を作成する。

読むべき歌集歌書リスト

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『女歌の論』島津忠夫(雁書館)

『歌の自然 人の自然』伊藤一彦(雁書館)


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