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『海を見たことがなかった少年―モンドほか子供たちの物語』ル・クレジオ あらすじ&感想

南仏ニース 外国文学

『海を見たことがなかった少年―モンドほか子供たちの物語』は、J.M.G. ル・クレジオの第二短編集。子供の視点から描かれる8編の物語。太陽、海、風、動物、昆虫、神話的なイメージに彩られた自然描写が美しい。

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モンド

モンドがどこから来たのか、誰にも言えなかったに違いない。ある日たまたま、誰も気がつかないうちにここ、私たちの町にやって来て、やがて人々は彼のいるのに慣れたのだった。

舞台のモデルは南仏ニース。

モンドには素敵な友達がたくさんいる。釣師のジョルダン、ジプシー、コザック、ダディ爺さん、そして、ティ・シン。モンドと町の住民たちの交流には幸福が溢れている。

しかし、時の経過にしたがって、不穏な存在が街を脅かす。モンドの友達たちが姿を消していく。灰色のトラック「シアパカン」が不気味に、ゆっくりと、走り回っている。

最後の場面、ティ・シンは涙を流し、咽喉を締め付けられながら、警察署長に訴える。「あなたはなんにもわかってないんです。なんにも!」。

「非常に長いと同時に非常に短い時間」が過ぎて、それでも、我々は誰かを待っている。忘れてしまった、大切な誰かを。

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リュラビー

リュラビーがもう学校へは行かないと決めた日、朝もまだ早い時刻だったが、それは十月のなかばごろだった。

笠松の木立のなかから始まり、海岸に沿って岩場まで下っている「密輸人の道」。神話的な雰囲気が漂うギリシャ風の家「カリスマ」。

偶然出会った眼鏡の少年は、リュラビーに似顔絵をプレゼントする。焚火を囲いながら、リュラビーと少年は会話を交わす。素敵な場面だ。

しかし、学校の外の世界には、危険も待ち構えている。「青地の木綿ズボンに革ジャンパーを着た男」がリュラビーを探している。リュラビーは邪悪な存在から逃げなければならない。

学校に復帰したリュラビーに、フィリッピ先生は声をかける。

「それじゃ、もうすぐ、授業が終わったら、訊きたいことは何でも訊くといい。海は大好きだよ、私も」

大人の理解者が近くにいてくれること、大事ですよね。

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童児神の山

レイジャルバルミュール山は土の道の右手にあった。六月二十一日の光のなか、山はとても高くどっしりとしていて、草原地帯と大きな冷たい湖を見おろしており、ジョンにはただもうその山しか見えなかった。

少年ジョンは、「なぜ自分がレイジャルバルミュールに向かって歩いているのかよくわからなった」のだが、とにかく、山頂を目指す。

山の頂上で、ジョンは牧童の姿をした不思議な子供に出会う。

二人は素敵な時間を一緒に過ごすが、朝起きたら、子供の姿はいなくなってしまっていた。

『となりのトトロ』ではないけれども、「子供のときにだけあなたに訪れる不思議な出会いの物語」だ。

水ぐるま

そんなとき、ヨルが現れる。ヨル、それは奇妙な都市、赤い石ころだらけの、人影のない大地のまん中にある、真っ白な都市だ。

主人公は牛飼いの少年ジュバ。ジュバ(Juba)は、北アフリカ、古代ヌミディア王国の王の名である。

朝の冷たい空気の中、ジュバは牛を駆り立てながら、現実と幻想の狭間ヨルを行進する。

“「私はジュバだ」と若い王は思う。それから大声で力をこめて言う―
「私はジュバだ、ジュバの息子、ヒエンプサルの孫だ!」”

子供の想像力は宏大無辺だ。

海を見たことがなかった少年

彼の名はダニエルといったが、しかしできることならシンドバッドという名でありたかったところだろう、それというのもその冒険の数々を赤い表紙の、厚い本で読んだことがあり、その本をいつも、教室にも大寝室にも持ち歩いていたからだ。

いつも、ル・クレジオの登場人物は海に憧れている。ダニエル少年はその典型的な主人公である。

本作品では、学校から姿を消したダニエルの冒険が語られている。ところが、ダニエルは誰にも何も告げず、旅立ってしまったから、ダニエルの具体的な消息は誰にもわからない。

それでは、このお話の語り手は一体誰だろうか?

ダニエルの消息を掴むために、教師、学監、警察たちは必死に捜索をする。にもかかわらず、ダニエルの行方はわからない。あたりまえだ。ダニエルの冒険には不思議な力が働いていたから。

ついに、おとなたちは諦めて、「まるでダニエルが一度も実在したことがなかったかのように」振る舞う。

それでも、学校の子供たちはダニエルの噂話を続けている。

「ダニエルが着いたのは、ぜったい夜だったに違いない」

子供たちの想像力が語り手となって、ダニエルの冒険は、子供たちの心の中で永遠に続いていくのだ。

アザラン

「ラ・ディーグ・デ・フランセ」、それは本当は町ではなかった、それというのも、家も通りもなく、板とタール紙とならした土でできた掘っ建て小屋があるばかりだったから。

様々な人種が居住する貧しい土地「ディーグ」。

少女アリアとマルタンの心の交流が美しい。

“「じゃ何が欲しいの、そのときは?」とアリアは訪ねた。
「神だよ」マルタンは言った。”

しかし、政府当局の魔の手が「ディーグ」に忍び寄る。

結末部、マルタンは「ディーグ」を離れる。住民たちは、何も語らないまま、マルタンについていく。彼がどこに行くのかわからないまま。神秘的な光景だ。

空の民

プティト・クロワは、何よりもこんなことをするのが好きだった。太陽が大いに照りつけるとき、村のいちばんはずれまで行き、堅くなった地面にきちんと直角になって座るのだ。

人間のいない国、砂と埃の国で、唯一の境界として地平線に長方形の地卓(メーサ)があるだけの場所。

プティト・クロワは、風に、雲に、光に語りかける。

プティト・クロワと兵士の会話。

そして、巨大な戦士サカゾフーが地上におりてくる。

牧童たち

まっすぐで長い街道が砂丘の国を横切っていた。ここにあるものとてはただ砂、棘だらけの小潅木、踏むとはじける乾いた草以外になく、そして、そうしたものすべての上に、夜の暗黒の大空があった。

少年ガスパールは砂丘の国で牧童たちに出会う。アベル、アントワーヌ、オーギュスタン、カフ、牡山羊アトルース、犬のヌーン、狐のミム。牧童たちの言葉はガスパールにはわからないが、彼らは一緒に生活をするようになる。

牧童たちは、谷間の土地、「ジェンナ」で暮らし始める。

しかし、一匹の蛇ナックを殺してから、生活が急激に変化する。

ついに、アベルはジェンナの王である白い鳥を殺すことを決意する。ガスパールはアベルを引き止める。ガスパールはジェンナを離れ、楽園の暮らしは終わりを告げる。

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